事業再生にはどのくらいお金がかかるのか

投稿日: 2020.12.13

生井 勲

生井 勲

事業再生に取り組まなければならないような経営危機に陥っている会社は、おしなべて資金繰りに窮しています。ですが、弁護士や会計士、他にも様々なコンサルがいますが、そうしたコンサルティングに必要となる費用は、一体どのくらいでしょうか。予めある程度の心の準備はしておきたいものです。

もちろん、事業再生は、会社やその経営者が置かれた状況によって選択すべき事業再生の手法が異なり、したがってそのために必要となるコンサルティングサービスの内容も異なってきます。サービス内容が異なれば価格が違うのは当然で、さらにそのサービスを提供する専門家にも、比較的高い金額を要求する人と低い金額の人とがいます。また、依頼する企業側も、企業規模、従業員数、負債総額などの事情が異なります。一口でいくらかかると言えないのは当然ですが、あくまで一般論として目安を書きたいと思います。

まず、真っ先にかかる費用はデューデリジェンスと呼ばれるものにかかる費用です。デューデリジェンスとは企業調査という意味で、つまり会社や経営者が置かれた状況を調査しレポートすることです。このレポートによってはじめて、会社再建を支援する金融機関やスポンサーに状況を知らせることが出来るので、リスケジュールから始まり債権放棄、融資や出資まで様々な金融支援を期待できるようになります。金融機関などに支援を要請するのであれば、こうしたレポートは必須です。

デューデリジェンスには、簡易的なものから本格的なものまで、内容も財務DDと事業DDで完了する通常のものから、法務DDや税務DD、労務DDに至る広範なものまで様々です。つまり、それによって関与する専門家の種類も人数も違ってくるし、また、企業規模によって調査工数も変わるので、費用も様々と言うほかありません。が、仮に年商5億円の中小企業であれば4、500万円ぐらい、年商10億円を超えるようであれば800万円というところでしょうか。このくらいの費用をかければ通常のデユーデリジェンスは可能です。

その後、新規融資やリスケジュールなどの金融支援を受けて財務体質改善を目指す場合、その進捗報告を金融機関に行なうためにモニタリングが必要になります。そうした実行支援をどの程度まで、どのくらいの頻度で行なうかによってコンサル費用は異なりますが、1回当たり10万円程度の費用はかかるものと考えた方が良いでしょう。

しかし、金融支援の内容に債権放棄などが含まれてまれると、さらに費用がかります。つまり、債権放棄が必要なケースでは、多くの場合、経営者に対して連帯保証責任が追及されることになるので、弁護士に債務整理のための代理人を依頼するのが一般的だからです。また、手続きの公正さを担保するためにも、弁護士が関与していた方が金融機関としても意思決定をしやすい面があります。したがって、上の費用にさらに弁護士費用が追加されると思った方が良いでしょう。

それでは、弁護士費用はいくらぐらいなのでしょうか。これも、関与する弁護士によって様々なのですが、著名な弁護士や大手弁護士事務所に依頼すると、2000万円や3000万円をいきなり要求されることも稀ではありません。事業再生ADRと呼ばれる手続きの公正性を重視する手法がありますが、これも弁護士の関与が必須です。上記と同様かそれ以上の費用がかかると思った方が良いので、年商数億円や十数億円といった規模の中小企業には到底手が出ません。そこで、国は、各都道府県に中小企業再生支援協議会を設置し、比較的廉価で、またさらに補助金も使えるような形式の事業再生手法を提供しており、これは行政によるADRと呼ばれることがあります。これならば、年商5億円規模の中小企業であれば、仮に弁護士費用も含めたとしても恐らく1000万円以下で済み、一部補助金が出るのでさらに負担は小さくなります。

また、こうした任意整理ではなく、民事再生などといった法的整理では、上記以外に裁判所に支払う予納金が必要となります。予納金は負債総額で決まっており、5000万円以下であれば200万円、1億円以下で300万円、10億円以下で500万円、50億円以下で600万円です。民事再生は、事業再生ADRなどと比べれば弁護士費用は安価である場合が多いのですが、これも依頼する弁護士によって大きく異なるので決定的なことは言えません。大手法律事務所では負債総額5億円で総額2000万円ぐらいかかる場合もあります。この場合、予納金と合せて2500万円ですからかなりの金額になると言って良いでしょう。

いずれにせよ、事業再生のコンサル費用はそれなりになると思って良いでしょう。特に弁護士費用が加わると、さらに膨れ上がります。このことが、どんな再生手法が自社の状況に適しているのか、しっかりと検討しなければならない理由でもあります。繰り返しになりますが、選択する再生手法によって費用は大きく異なるからです。

しかし、事業再生という取組みは、多くの経営者にとって初めての経験なので、高いか安いかの判断は付きにくいものがあります。生涯に一度、人生を賭けて行なうものだからプライスレスだという考えもあながち間違っているとは言えません。しかし、身の丈にあったものという観点は忘れてはならないでしょう。

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この記事を書いた人

生井 勲

生井 勲Namai Isao

株式会社ポールロードカンパニー 代表取締役
エグゼクティブコンサルタント

1969年10月生。神奈川県出身の中小企業診断士。神奈川県中小企業診断協会、日本ターンアラウンド・マネジメント協会に所属。 学習塾チェーン、教育系フランチャイズ企業、大手運送グループにて、店舗運営やBPO事業の運営管理、経営企画など広範な職掌に従事した後、事業再生コンサルタントとして独立した。 独立後は、事業再生支援や再成長支援、M&Aアドバイザリーなど、苦境に陥った地域の老舗企業・有名企業を対象に、幾多の困難なプロジェクトに携わってきた。 こうした経験を元に、2019年に「ポールロード式再生メソッド」を開発して株式会社ポールロードカンパニーを設立、代表取締役に就任。現在は、同社の経営にあたるとともに、リードコンサルタントとして活動している。

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