リスケジュールによる事業再生を成功させるために

投稿日: 2020.12.13

生井 勲

生井 勲

資金繰りに窮してくると、経営者はまずはじめに銀行からの借入を考えます。しかし、たとえば3年返済で3,000万円を借入れた場合、月額83万円の返済増となります。いま、毎月の返済額が150万円だとしたら、これが233万円になるわけです。したがって、1年もすると、営業CFが出ていない会社は、3,000万円をすべて返済に充て、またしても資金繰りに困窮するようになります。こうした借入を繰り返していくと、借入金は少しずつ増えて月々の返済額は膨れ上がり、返済のために借入をする自転車操業となります。

月々の返済額が増え借入の頻度が上がれば上がるほど、経営者は資金繰りしか見えなくなります。自転車操業を続けることが経営だと思い始めるのです。親から継いだ会社を自分の代で潰すのはプライドが許さないとか、自分の失敗を認めたくないとか、根拠もないのに売上が増えるはずだとか、強い思い込みで自分を納得させようとします。しかし、社員には昇給もなく、ボーナスも目減りし、自分自身の役員報酬も少なくなっていくなかで、そうした思い込みに頼った経営は、本来の会社経営の目的から目を覆うことでしかありません。やがて金融機関も追加融資に難色を示すようになります。

結論から言いましょう。

こうした場合、企業再建への第一歩は、借入金への依存を断つことです。返済のための借入を止め、本来の会社経営の目的に専念できる環境を整えることです。きちんとした手順を踏み、交渉に当たれば、銀行は理解してくれるはずです。リスケジュール、つまり返済条件の緩和を申出るのです。借入金への依存を断つことで、かえって資金繰りは安定し、会社は再建への道を歩み始めます。

しかし、ここで大切な問いがあります。本来の会社経営の目的とは何でしょうか。もちろん、かつては大きな会社にしたいとか、売上を増やしたいとか、様々な夢や希望があったことでしょう。しかし、日に日に困窮する資金繰りに追われる中で、そうした夢や希望は儚く薄らいでしまっているかもしれません。会社経営を続ける上で、最も大切にしたいものは何でしょうか。改めて考えることが必要です。

経営者の親族から借入れた借金をせめて返済したいとか、家族が長年勤務してきた会社を継続的に働けるところとして残したいとか、先祖代々継いできた会社を存続したいとか、改めて会社経営の目的を考える必要があります。というのも、第一に、こうした目的は経営者しか定めることの出来ないものだからです。銀行はリスケに協力をしてくれても、目的を決定してはくれません。リスケは手段であって、目的ではありません。

また、第二に、こうした目的は事業再生の手法を選択する際に、とても重要な条件となるからです。たとえば、設備老朽化のために市場競争力を失っているが、収益力を回復して後継の息子に会社を継ぎたいというケースでは、リスケは、新規融資が受けられない中で行なう新設備導入のための資金調達手段と見なすことが出来ます。そして、このケースでは息子への事業承継が目的となります。逆に、先祖代々継いできた会社を残すのが大切で、社長本人は健康を害しており、親族に後継者もいないケースでは、売却も選択肢となります。売却が実現するまでの手段がリスケジュールであり、事業再生のゴールは売却となるのです。

いずれにせよ、リスケは一時的な猶予であり、その期間に何をするかで事業再生の成否が決定します。日々資金繰りに困窮する中で最初に希望するのが元本返済停止による資金繰り改善であるのは間違えないとしても、リスケは一時的な措置に過ぎませんから、きちんとした会社経営の目的、もしくは事業再生のゴール設定が不可欠なのです。

最後に、次のようなケースでは、リスケは当面の目的である資金繰り改善にさえ大きくは寄与しない可能性があるということに注意を促して、この稿を終わります。

たとえば、営業CFがマイナスである場合はリスケをしても、直接的には資金繰り改善に至りません。金融機関への返済が停止しても、キャッシュフローが減り続けるのだから当然のことです。また、手形割引や当座借越、売掛金と紐付いた短期融資が資金繰りに役立っていたケースでも、注意が必要です。これら借入がある場合は、慎重にリスケのための交渉を行なっていく必要があります。こうしたケースでは、交渉の結果次第では、かえって資金繰りが悪化してしまうことがあるからです。

しかし、返済のための借入、つまり借入依存症を脱することが会社再建の第一歩であることは変わりません。こうしたケースでは、リスケ交渉において、または正式なリスケ承認後の営業CF回復までの資金繰りにおいて、厳しい道のりを想定せざるをえませんが、いずれにせよ、返済のための借入という悪循環を断つことで経営者が大切にする会社経営の目的そのものに向かって動き出すことが出来ます。

どれほど厳しい道のりでも、目的を見失わずに進むことが、最も大切なことです。このことが、これまで経験したことのない困難にも立ち向かう勇気や情熱をもたらすからです。そして、当然ながら、目的ないしはゴールを設定して進めば、時間はかかっても必ずそれは達成されるからです。つまり、その意味で事業再生に失敗はないし、逆に、目的やゴールを忘れてその場しのぎをしても、元々厳しい経営状態の会社ですからそれが半恒久的に続くだけで、成功はあり得ません。それは、リスケ期間をいたずらに長期化させ、企業体力を消耗させてやがて死に至るでしょう。

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この記事を書いた人

生井 勲

生井 勲Namai Isao

株式会社ポールロードカンパニー 代表取締役
エグゼクティブコンサルタント

1969年10月生。神奈川県出身の中小企業診断士。神奈川県中小企業診断協会、日本ターンアラウンド・マネジメント協会に所属。 学習塾チェーン、教育系フランチャイズ企業、大手運送グループにて、店舗運営やBPO事業の運営管理、経営企画など広範な職掌に従事した後、事業再生コンサルタントとして独立した。 独立後は、事業再生支援や再成長支援、M&Aアドバイザリーなど、苦境に陥った地域の老舗企業・有名企業を対象に、幾多の困難なプロジェクトに携わってきた。 こうした経験を元に、2019年に「ポールロード式再生メソッド」を開発して株式会社ポールロードカンパニーを設立、代表取締役に就任。現在は、同社の経営にあたるとともに、リードコンサルタントとして活動している。

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