中小企業再生支援協議会とはどんな機関か?

投稿日: 2020.12.13

生井 勲

生井 勲

経営困難に陥った中小企業経営者が、取引金融機関や顧問税理士などから中小企業再生支援協議会の利用を薦められることがあります。ですが、中小企業再生支援協議会とはどんな機関なのでしょうか。

中小企業再生支援協議会とは、平成11年8月に制定された産業活力再生特別措置法によって、中小企業の事業再生を支援する目的で、各都道府県に設置された機関です。大事なのは、同法に則って設置された行政上の機関としてその正当性が権威付けられている、ということです。具体的な運用規則については、私的整理ガイドラインに準じて作成された協議会スキームと呼ばれる規則に基づいて運営されます。私的整理ガイドラインとは、銀行など債権者と債務者企業が裁判所外で話し合う債務整理の手順を定めたもので、それゆえ協議会スキームは行政的ADR(裁判所外紛争解決)と呼ばれることもあります。その規則に則って銀行など債権者と債務者企業は交渉するので、調整は公正で、双方にとって安心感のあるものとなります。

具体的な手順としては、協議会スキームは1次対応と2次対応に分かれ、はじめに1次対応で簡易的な面談を行ないます。1次対応は無料ですが、ここで課題整理をして計画策定が必要ということになれば、2次対応へと進み、そこで会計士や中小企業診断士などの専門家によるデューデリジェンスと計画策定が行なわれ、この経営改善計画が金融機関の合意を得られるよう調整を図っていくことになります。

しかし、2次対応に進まないケースも多々あり、各都道府県によって事情は異なるとはいえ、2次対応に進むのは約1割に過ぎません。というのも、一つは、資金繰りが約6ヶ月間、つまり2次対応の実施期間は確保出来る見込があること、二つ目にはメイン行の支援が得られる見込があることなどの要求水準があり、これを満たせない企業が多いためです。

しかし、いずれにせよ、2次対応に進むと、協議会は法によって設置された行政組織なので、他の手法では活用できないか、または活用が困難な様々な制度・手段を選択することが可能になります。そうした協議会の関与によって選択可能となる制度・手段としては以下のものがあります。

1.協議会版DDS・・・担保権実行や代位弁済を保留したまま行なうDDS

2.中小企業基盤整備機構によるプレDIP信用保証制度・・・リスケ企業への融資

3.中小企業再生ファンドの活用・・・債権放棄やスポンサーによる出資を受ける際に活用

4.中小企業承継事業再生計画による債務圧縮や許認可取得・・・第二会社方式による再生

これらの他にも、ごく稀ですが、社長を続投させたままで債務圧縮を行なうなどの可能性もあり、協議会スキームは私的整理ガイドラインよりもずっと柔軟性があります。債権放棄には連帯保証責任に対する対処が不可欠ですが、協議会スキームでは、債務者企業と連帯保証人である社長の代理人を同一弁護士にすることで、経営者保証ガイドラインを並行的に運用できるのも魅力です。中小企業の債務には多くの場合、信用保証協会の信用保証が付いていますが、協議会スキームではバンクミーティングに必ず信用保証協会が参加することになっており、信用保証協会との連携が図りやすく債権者合意が得やすいというメリットもあります。しかも、デューデリジェンスや計画策定など2次対応にかかる専門家費用の一部には、国から補助金が支給されます。

このように協議会スキームのメリットは、私的整理ガイドラインを改良して中小企業に使いやすく、なおかつ公正さを担保した手続きを行えるという点と、行政組織であるため各種の優れた制度・手段が利用可能であるという点に求められます。しかし、他方、活用に当たっては留意しておかなければならない点もあります。

具体的には、各都道府県の中小企業再生支援協議会のメンバーについてです。この人選は、協議会スキームでは、各都道府県の商工会議所会頭が行なうことになっていますが、実際はそのメンバーの多くが地域の金融機関、つまり地方銀行及び信用金庫の出身者や出向者で占められているのです。残りは公認会計士なので中立的ですが、その人選上からどうしても金融機関寄りの視点や考え方が強くなってしまうことは避けられません。

しかし、こうした金融機関寄りの人選とそれによる偏向が、債務者企業にとって常にデメリットになるわけではないことは、注意しなければなりません。たとえば、債権放棄を伴う金融支援は、そもそも債権者である金融機関側に大きな負担を強いるので、金融機関寄りの考え方や手順がそれを実現する上では非常に重要なポイントとなります。協議会は金融機関からの信頼が篤いため、こうしたケースでは債務者企業にとっても協議会の利用価値は高いといえるのです。

しかし逆に、リスケジュールでは、そうとばかりは言えないかもしれません。リスケとは一時的に返済条件を緩和して、その期間に収益力を回復させることを第一目的にするものだからです。つまり、リスケは、債務者企業が中心となって収益力回復に努めなければ無意味な制度であり、事業面のノウハウについて無知な金融機関側が過剰な口出しをすることはマイナスになる可能性が高いと言えるのです。ところが、協議会は金融機関の出身者や出向者が多くいるため、債権者側の意向は増幅されがちになります。リスケ期間中に設備投資が必要なケースなど、無用なまでに細かい折衝が行なわれ、債務者企業の負担になることも珍しくありません。

したがって、こうしたメリット・デメリットを考えた上で、協議会は活用すべきということになります。当面必要とする金融支援がリスケである場合は、とくに慎重にした方がいいかもしれませんが、逆に、上記の1~4のような制度・手段の活用が事業再生に必要と考えられるケースでは、協議会の活用はとても有力な再生手法となる可能性があります。債権放棄など金融機関にとって厳しい負担を要求する場合でも、とくに協議会は利用価値があります。まず、経営の目的、事業再生のゴール設定を明確にした上で、協議会の活用を検討するのが良いのです。

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この記事を書いた人

生井 勲

生井 勲Namai Isao

株式会社ポールロードカンパニー 代表取締役
エグゼクティブコンサルタント

1969年10月生。神奈川県出身の中小企業診断士。神奈川県中小企業診断協会、日本ターンアラウンド・マネジメント協会に所属。 学習塾チェーン、教育系フランチャイズ企業、大手運送グループにて、店舗運営やBPO事業の運営管理、経営企画など広範な職掌に従事した後、事業再生コンサルタントとして独立した。 独立後は、事業再生支援や再成長支援、M&Aアドバイザリーなど、苦境に陥った地域の老舗企業・有名企業を対象に、幾多の困難なプロジェクトに携わってきた。 こうした経験を元に、2019年に「ポールロード式再生メソッド」を開発して株式会社ポールロードカンパニーを設立、代表取締役に就任。現在は、同社の経営にあたるとともに、リードコンサルタントとして活動している。

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